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コラム

『操縦士免許制度』に関する私的論点整理

 本年3月下旬に報道された、国の「(2022年の運用開始を見込む、小型無人航空機レベル4社会実現に向けた)ドローン操縦士免許制度創設(案)」については、その後、様々な憶測と、心構え・諸準備の必要性を社会に投げかけたものと思われますが、今回のコラムでは、その制度に関わる論点整理を浅学ながら試みてみたいと思います。
 当該案件に関する国の会議資料によれば、今回の制度改革では主として、以下の3点がポイントとして提示されております。

  1. ① リスクのもっとも高い飛行(カテゴリーⅢ)については、「機体認証、操縦ライセンスの必須化/運行管理体制については個別審査」とする。
  2. ② 比較的リスクの高い飛行(カテゴリーⅡ)については、「機体認証・操縦ライセンス取得・法令で規定する運行管理ルールの遵守、を前提に個別の審査省略」とする。
  3. ③ 上記 ① , ② に関する機体認証・操縦士ライセンスの審査は、民間の審査能力を活用する。


 また、上記のポイントを念頭下するにあたって、ドローンに携わろうとする民間機関が今後留意すべきこととして、次の観点が重要視されていくものと思われます。

  1. ❶ EASA(欧州航空安全機関※EU専門機関の一つ)をはじめとする先進諸外国の概念に習った、リスク概念の制度設計導入(カテゴリー分類の導入)。
  2. ❷ 種々の重要な審査を委託されるとみられる、民間機関の実績要件(“ふるいかけ”)。
  3. ❸ 制度運用開始前にすでに民間ライセンスを取得している者の制度施行後の扱い、要件。


 そして…。上述のような、一般にクローズアップされがちな観点に比して、国の検討会議ではあまり重要視されなかった(今後に委ねられた/検討留保された)とみられる観点のうち、わたくし的には重要と思われた論点について以下少し触れてみたいと思うのですが…、会議資料では、民法207条「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」という条文について、「土地所有権は所有者の利益の存する限度内で及ぶ」という通説から「土地の上空の飛行が直ちに所有権を侵害するわけではない」という解釈を導き出し、当面は「安全な飛行形態の確保、住民理解」等の“社会受容性”の確保に注力していく旨の方向性が示されておりましたが、ちょっとその方向性については今回の法改正案の向かおうとする理念・掲げようとした大きなベクトルの重量感に照らしてみると、少し軽々な思考に思えてしまったのは私だけではないと思います。

 そもそも、元々の航空法第1条(目的)では、「航空の発達による『公共の福祉』への寄与」がうたわれており、その一環として、同法100条以下(人の輸送以外の)「航空運送事業」について規定が示されていますが、この規定が念頭におく輸送物の内の「貨物」について、民法207条の抵触をクリアする論拠は、ひとえに「公共の福祉に資するから」であり、これまで航空機による貨物輸送がそれゆえに法的論拠を持っていたのであれば、今般の小型無人機による物流ドローン時代への法整備に関しても同様に『公共の福祉』という論拠をもって、論点整理がなされるべきではないかという疑問が生じてしまいます。

 わが国では、憲法29条【財産権】の第3項によって、「私有財産は正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」という条項をもっており、これを根拠として、道路等に私的財産を収用してきた歴史がありますが、今般の議論においても同様に、当概民法規定への抵触懸念については、国家が「公共の福祉」に資する社会実現のために、必要な要件を設定したうえでの「小型無人機の上空利用のための物流機構を設定し、そこへの登録・審査をもって、空の交通実現を行う」というような、正面突破的な理念をも併せ考えるべきではないかと思います。

 実は、昨秋、私が所属する団体「(一社)全国自動車学校ドローンコンソーシアム」は、国会内において、有力議員先生ほか関係する職員の方々との間で、ドローン施策に関する協議を行わせていただく機会を得、その際に5つの要望を行わせていただきましたが、その第一点目がこの『国認定の無人航空機物流機構の創設』というものでした。その後、5つの要望の内、2点は叶うところとなりましたが、当概論点に関しても何らかの痕跡が残せればと私は心ひそかに願っているところなのです。