1. HOME
  2. コラム
  3. いまあらためて「交通」を考える
コラム

いまあらためて「交通」を考える

コラム

 今般の「コロナ禍」は、地球上の地域・国の別なく、あらゆる人々にかつてない規模の影響を及ぼしておりますが、この半年間に人類が被った様々な被害の中でもとりわけ深刻なことの一つに、「不安や恐怖、緊張、孤独」がもたらし続けている『精神への浸食』がクローズアップされてきたように思われます。これははっきりと目に見えて現れてくる場合もあれば、一見、何の変化もないように傍目には見えていて、実はかなりの深刻度で精神を蝕んでいる場合もあり、一概に全容の解明はできませんが、自死や心療系医療機関への通院や社会生活上の不具合等、身近なところを含め、見聞きするケースがこの二か月ぐらいの間で増えてきたように思います。
 日本語で『交通』を意味するドイツ語・『verkehr(フェァケール)』という語には、ドイツの地誌的・歴史的作用が加味されてか、実に多くの語義があるらしく、trafficが意味させる「通行、往来、運輸」のほか、contactが意味させる「連絡、接触、仲介」、commnnicationが意味させる「伝達、情報、通信」、intercourseが意味させる「国交、交際、性交」、tradeが意味させる「貿易、商売」、serviceが意味させる「労働、提供、援助」…等、広い範囲の、人が交りあう諸行動が含まれており、マルクスはその著書『ドイツ・イデオロギー』の中で、経済学的見地から、「人々のverkehr こそが経済の本質である」ことを説いております。
 第一回目のコラム『「自動車学校⇒ドローン」というベクトル』でも触れましたが、この新型コロナウイルスの最大の特徴であり最大の罪は、「人と人とを分断させる作用」を施していることで、換言すれば、上記「verkehr」が指し示す営みの大半を遮断していることとも言え、そのことがもたらしている具体的な活動態様の制限は、第一波としては「経済の停滞」、そして第二波として「人々の精神の破壊」という形で人類に警鐘を鳴らしているような気がしてなりません。そしてそのことは、この「verkehr」(広義の交通)という営みが人類にとって、いかに重要なことであり、その停滞がいかに莫大な損失・阻害行為であるかを物語っております。
 この二・三年、私たち自動車学校系ドローン団体は「陸の交通概念」に加え「空の交通概念」という分野についてもフィールドを拡げ、考察し、研鑽を重ねてきましたが、上述の「verkehr」が著しく停滞を余儀なくされている状況の中、近年求められている交通概念変容への対応はなお一層の根本的意識転換を私たちに強いているようでもあります。

  1. ❶ 東京都内の自転車乗用者すべての保険加入義務化(2020年4月~)
    ※全国28自治体で義務化もしくは努力義務化
  2. ❷ 200g未満の軽量ドローンの一部も飛行規制ルールの適用対象に(7/19共同通信)
  3. ❸ 『CASE』(※)の示す4つの頭文字「C」「A」「S」「E」の有機的連動本格化へ

(※)【CASE】:「connected(コネクテッドネットワークとの接続)」「autonomous(自動運転・自動制御システム)」「shared/service(移動のサービス化)」「electronics/electric(電動化)」の4つの語の頭文字を取った各機能の連動による自動車未来システム(川原英司著「Mobility3.0」東洋経済新報社 より)

 これからの陸と空両面における交通概念を描くときに、重要なキーポイントともなりうる昨今の三つの情報(ニュース)を列挙してみましたが、特にも❸で指摘されている「CASE」の4つが連動し、モビリティに参入されていく未来像は、従来の常識の根源的変更を私たちに強いており、たとえば、「C:コネクテッド によって、車両から走行距離や急加速・急停止の頻度情報を取得し算定される保険料による自動車保険の登場/ローンの支払い停滞が発生するとその者の自動車のエンジンが停止する機能」など、保険や金融と自動車との連動というような、かつてない概念が自動車には添加され…、そして、❷や❶で挙げたような、従来「トイドローン」と呼称されていた軽量小型化ドローン(Mavic mini等)に対応した細分化した空の交通概念の想定。または、(自動運転時代のもっとも対極に位置し、機能性・一般性からも永続的に陸上交通社会の一翼を担い続けると思われる)自転車への規制普及が示唆するこれからの陸上交通概念の想定など、既定の陸空両面における交通概念自体も質量ともに大きく変容し、伴って、そこに携わる人々の常識もまた大きく変わっていくことが想像されます。
 再度「verkehr」に戻りますが、人類にとって、「交通」とは「営みそのもの」であり、それが停滞した社会はもはや、まともな人間社会とは呼び得ず、その兆候が見えている現状はそれだけに相当に深刻な危機と言えます。
 おりしも、季節はお盆前の移動が予定される時季にさしかかりましたが、人々や社会の活力を生み出してきた夏の「verkehr」。今年はどんなことになるのでしょう。一日も早い元の生活様式の復活が待たれてなりません。