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“空陸交通時代”の「官」の役割

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 4月から、月二回のペースで連載を続けて参りました、このコラムも本号で第11号目を迎えることとなりましたが、前号で触れました、社会の「パラダイムシフト」の様々な気配を見聞きするにつけ、私自身もその備え・内省に本格的にあたりたいとの欲求が昨今、ふつふつと胸に湧き上がるのを感じ、加えて、「同じところに留まっていてはいけないのではないか」、「同じルーティーンに満足していてはいけないのではないか」との疑問が現れ始めてきたこともあり、今般、次号(9月下旬掲載予定)第12号の掲載をもって、このコラムは一つの節目(終局)を迎えたいと思うに至りました。
 振り返れば、全くの独断と偏見に満ちた駄文の連続に過ぎないモノではあったかと思いますが、にもかかわらず、多くの読者の方々に支えられ、数多くのご意見・ご感想を頂戴し、心地よい緊張と刺激に満ちたすばらしい期間(経験)であったことは間違いなく、そのようなチャンスを与えていただいた「Air Ocean Magazine」編集部の方々には心より御礼を申し上げます。併せて、お付き合いいただきました読者の方々に衷心からの感謝の意をお届けしたいと思います。ありがとうございました。
 そして、本号を含め次回最終回まで、もうしばらくのお付き合いを賜れば幸いです。

 さて、そんなわけで今日の本題ですが…。
 8月下旬以降、様々なメディアで報道され、広く話題となっている、SKY DRIVE社の「空飛ぶクルマSD-03」の有人飛行試験のニュースは、また一歩新しい交通モビリティの可能性を現実化に近づける出来事として、さらに多くの企業が出資等の協力を検討し始めているとのことでしたが、その報道の中で、今後(現状)の問題として挙げられていた次の二点が気になりました。

  1. ① 空の交通像を描くうえで、免許制度を含む交通ルールがいまだ未整備であること
  2. ② フィールドとなる「上空利用権」に関する法解釈指針が“手つかず”であること


 この二つの問題は、ご承知の通り、ドローンの産業利用を目する者もエアモビリティを構想する者も数年前からネックとして常に考えてきた問題であり、そういう意味では「古くて新しい」、この分野に関わる根幹の問題と言えることなのですが、「ドローン社会の実現」という命題を考えるときに、現在、障害(懸念事項)となっている案件については、すでに官民協同でロードマップを作成し、『制度・技術の概成』という目標のもと、「所有者情報の把握」「操縦者の技能確保(段階別資格制度)」「(上空含む)電波利用の整備」「運行管理システム」「リモートID」「衝突回避技術」「機体性能評価」等の個別的整備は着々と整いつつあり、“本丸”以外の外堀が確実に埋まりつつあることは、かなりの社会マジョリティをもって理解されつつあるわけですが、根本となるべき大きな根拠思想が不分明であるがために社会受容性にまで繋がっていないことが大きな問題であると言えます。

 要するに、「ベクトル明示」や「理想像の披瀝」、「有用性の紹介」等のお題目を盛んに並べ立てるような号令的(黎明的)時期はとうに過ぎて、「成長期」に向けた、本当の実効性ある指針、実現段階を完全に見越した発信(または施策)がもう出されるべき段階に差し掛かってきているのではないか、という感慨を抱いてしまうわけです。
 自動車文明の黎明期(19世紀後半)にイギリスで施行された「赤旗法(車の前に赤旗を持った先導員が配置された法律)」に関するエピソードは必要以上の国家の関与による、文明進化の阻害要因の例としてよく取りざたされ、ドローンの世界においても関係者間では今なお「国家関与に対するけん制力」になっている感がありますが、「空の交通文化成長期」に差し掛かった今、むしろ求められているのは、逆に、実効性に結び付くような国家(行政)の関与かもしれません。
 具体的に言えば、たとえば、2019年12月に横浜市都市整備局と民間企業との間で事業実施を決めた「都市型ロープウェー事業(JR桜木町駅―運河パーク間)」の計画においてなされたという、「ロープウェー運行に関係する土地上空の占有・使用許可における“公共性”を根拠とした官主導の(対地権者)調整手法」なども新たな発想に基づく事業推進手法であり、これは以前の拙稿『操縦士免許に関する私的論点整理』で触れた、公的機関が行う「公共の福祉に資する」がための“大ナタ”的方法論でもあります(「公共性」という概念も時代と共に変化)。
 そして、それとは全く別角度の指摘ともなりますが、これだけ「空の交通(物流)」ということが今般の新しい交通モビリティの背景にあることを考えれば、その交通ルールを知悉し、実際に監視を行い、仮に取り締まる事態が発生した時にはその主力となる警察機関が机上の理解だけでその使命を本当に担えるはずはなく、(極論かもしれませんが、)全国の警察署交通担当者は等しくドローン操縦士資格を有し、公的使命遂行のために主導的・先行的に警察業務に運用を開始すべきなのではないでしょうか。
 例示した、それら二つの(これまでの行政手法とは異なる)公的機関の動き方は、必ずやこの分野における、元々の大きなテーマ『社会受容性の確保(推進)』に資するはずであり、その点では公もまた(民の後追いではない、率先した)新しい『パラダイムシフト』の時期に差し掛かっているものと思われるのです。